生物は何を食べ、どうやって消化吸収するかで環境に適応し、生き残ってきました。
 草食動物はもっぱら植物繊維などからエネルギーを得ます。なかでも蹄をもつ草食動物は消化の仕方で異なる進化をとげました。一方は牛やキリンなどの多くの胃を持つ偶蹄類。盲腸内細菌の力で発酵・消化させる方法を選んだのがウマやロバの奇蹄類です。
 偶蹄類は一度飲み込んだ食物を胃で発酵させながら、再び口に戻して噛む「反芻」をして効率よく栄養を分解・吸収するシステムを作りました。
 奇蹄類は巨大な盲腸を作り出して腸内細菌の力で発酵・消化させる方法を選びました。
 糞として出される植物の消化具合からは、消化吸収の効率では遇蹄類が優れているようです。現在、種類や数の上で繁栄を勝ち取った草食動物は偶蹄類でした。よく噛むことで消化を助け生存競争に勝ち抜いたといえます。
 さて、人類は雑食性で栄養のバランスを取るといわれます。ところが、モンゴルの遊牧民や極北の先住民など野菜を口にしない人たちもいます。栄養に問題はないのでしょうか。その秘密は彼らがヒツジやアザラシなどの動物を頭からしっぽ、血液まで丸ごと食べることにあります。血液には野菜などに含まれるビタミンやミネラルが含まれるため、栄養素はすべて満たされるといいます。厳しい自然環境で生き抜く民族の適応の形だったのです。しかもこうした民族はむし歯しらずの健康な歯を持っていました。しかし、近代化とともに食生活が大きく変わり、いまではむし歯も増えているそうです。