本来、上下の歯が咀嚼するのは、食べ物を咀嚼する時と飲み込む時くらいで、一日の摂食時間は3分程度といわれています。しかし、実際はほとんどの人が噛みしめ・歯ぎしりをしています。一昔前までは「原因不明の無用な悪い癖」とひとくくりにされていましたが、最近の研究では、必ずしも悪癖とは言えないことがわかっています。
 噛みしめ・歯ぎしりは日常のストレスや不安などによって引き起こされると言われており、精神的な緊張状態や不安をやわらげる効果が指摘されています。つまり、ストレスから体を守り、病気を未然に防ぐ作用があるということです。
 だからと言って、放置していいわけではありません。噛みしめ・歯ぎしりを放置すれば歯牙の摩耗や破折を引き起こし、象牙質知覚過敏症の原因となります。とくに、睡眠中の歯の噛み合わせでは、意識して噛む力の6倍もの力が歯に加わり、歯のみならず顎関節にまでダメージを与えることもあります。歯根部が破折すれば即抜歯につながるために警戒が必要です。
 これを防ぐにはセルフコントロールしかありません。精神的・肉体的なストレスをなるべく減らし、過緊張な状態をつくらないように努めましょう。身体に無理をかけず、睡眠時間を十分にとることが重要です。また、唇を閉じ、上下の歯を合わせないようにして顔の筋肉の力を抜くトレーニングも効果的です。
 希望者には、就寝時に歯を守る装置として、マウスピースをお勧めしています。