世界で広がるフッ素利用
 フッ素のむし歯予防効果は日本でも広く知られるようになりました。家庭においてもフッ素を配合した歯みがき剤や洗口液などを多くの方が利用しています。もともとフッ素は自然に広く存在する元素のひとつですが、いつからむし歯予防に利用されるようになったのでしょうか。
 ◇予防効果の発見
 フッ素研究の黎明は100年以上前に遡ります。コロラド州を訪れたアメリカの歯科医師フレデリック・マッケイ博士は、住民の多くが褐色の歯をしていることに驚きました。そして、歯に着色がある住民にはほとんどむし歯がないことに気が付きます。「これは環境によるものに違いない」と調査を始めたマッケイ氏は、飲料水に高濃度のフッ素が含まれていることを発見しました。その後、アメリカ国立衛生研究所によってフッ素を適度な濃度に調整すれば歯が着色することなく、むし歯予防に効果があることが明らかになりました。
 ◇フロリデーション
 フッ素の利用には様々な方法がありますが、水道水のフッ化物濃度を調整するフロリデーションという方法もその一つです。アメリカをはじめ、アイルランド、オーストラリア、韓国など世界61ヵ国、3億6000万人以上がフロリデーションによってフッ素の含まれた水道水を飲み、むし歯を予防しています。 日本では米軍基地内を除き導入されていませんが、厚生労働省は地域の要請に応えて技術支援を行うことを表明しています。むし歯の無い社会に向けて、フッ素利用は世界中で推進されています。