冬は空気が乾燥し、新型コロナやインフルエンザなどのウイルス感染症が流行しやすい季節です。感染拡大の防止には「三密」(密集・密閉・密接)の回避や手洗い・うがいの徹底、マスクの着用が大切ですが、もう一つ実践してもらいたいことがあります。それは……ずばり、「口腔ケア」です。
 ◇ウイルスが侵入
 なぜ口腔ケアが感染予防につながるのか。それはウイルスが体内に入り込む仕組みにあります。
 ウイルスは生物の細胞内で増殖します。喉や鼻の粘膜に到達すると、粘膜細胞に入るための「鍵穴」(受容体)を探し出し、扉を開けるようにして侵入。細胞内のタンパク質やエネルギーを使って増殖します。
 通常、粘膜細胞は粘液で覆われており、ウイルスの侵入を防御しています。口腔内が不潔になり歯周病が増殖すると、歯周病菌が出す毒素(タンパク質分解酵素)によって粘液が溶かされます。すると粘膜細胞の鍵穴が丸見えになり、ウイルスが侵入しやすくなってしまいます。
 ◇リスクが激減
 つまり、感染を防ぐには口腔内を清潔にし、歯周病菌を抑えることがポイントというわけです。そのためには歯みがきとともに、歯科医院でプラーク(歯垢)を除去することが欠かせません。
 口腔ケアとインフルエンザの関連を調べた研究では、介護施設で歯科衛生士による口腔ケアを実施したグループと、普段の歯みがきだけのグループを比較。口腔ケアを受けたグループはインフルエンザの発症率が10分の1に激減したと報告されています。
 ウイルス感染症を乗り越えるために、お口の中をきれいに保ち、ウイルスを寄せ付けない体をつくってくださいね。