むし歯の原因となる「ミュータンス菌」。実は、生まれたばかりの乳児は感染していません。ミュータンス菌は家族などを通じて、乳児の口の中に「侵入」することで感染します。
◇侵入・定着・増殖
 侵入したミュータンス菌は歯にたどり着き、砂糖をエサに住みつきます(定着)。菌が「増殖」すると、いよいよ「感染」となるのです。
 箸やスプーンの共有に神経質になる親御さんも増えています。とはいえ侵入しただけで、すぐにむし歯にはなるわけではありません。口の中で増えた菌が砂糖をエサに酸を作り出し、歯を溶かしてむし歯を引き起こすからです。定着・増殖を防ぐことがむし歯予防のポイントになります。
 ミュータンス菌をアリに置き換えて考えてみるとわかりやすいかもしれません。砂糖を置いておくとアリがよってきますが、砂糖がなければアリはどこかへ行ってしまいます。口の中に砂糖があるとミュータンス菌が定着・増殖しやすい環境になるのです。むし歯は「砂糖ありき」といえます。
 定着と増殖は、砂糖の摂取頻度といった食生活が大きく関係しています。むし歯は“感染症”であると同時に、“生活習慣病”ともいえるのです。
◇危ない間食3回以上
 幼稚園児を対象にした生活習慣の調査では、むし歯のない園児の70%にはミュータンス菌が存在しないことが明らかになった一方で、間食を1日3回以上とる園児はミュータンス菌の存在と関係が強いことが明らかに。甘いおやつを食べ始めた時期が遅い子は、関係が弱いという結果も。
 侵入を防ぐのも大事ですが、砂糖を減らしてミュータンス菌の住み心地を悪くするのも効果的のようです。
参考文献:岡崎好秀(2017)『世界最強の歯科保健指導上巻』クインテッセンス出版